四、年金制度改革について
表題から曰くつきと申し上げざるを得ない「素案」ですが、なお問題点の枚挙には暇がありません。
「素案」では、民主党マニフェストに沿って、「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる新たな年金制度を創設すること、更にはそのための法案を来年提出することが明記されています。
この新年金制度については、我々はかねて、仮に65歳以上の方全員に月7万円の最低保障年金を配ればさらに14兆円、すなわち消費税率にして約6%の増税が必要になると指摘してまいりました。増税規模を圧縮するとすれば、所得制限の水準を低くせざるを得ず、給付が減り、負担が増えるのみの国民の数が増えることとなります。
この点に関し、昨春の民主党の調査会では、最低保障年金を導入すれば、最大で7%分の消費税の更なる増税が必要になるとの試算結果が示されたものの、資料は回収され、お蔵入りになったと報道されています。その試算では殆どのケースで、中堅所得者の給付が減るうえに税負担も増えるダブルパンチになるとも報道されています。これは、保険料を納めなかった人も含む全ての人に月7万円をばらまくことが如何に大きな財政負担を伴うか、財政負担を抑えようとすれば中堅所得者までも負担増となるのみで、いかに保険料を納めた正直者がバカをみることになるかを示す試算だと言えます。
総理にお尋ねします。報道されたような非公表の試算は実在するのですか。するのであれば隠蔽せず、公表すべきではないでしょうか。そしてなぜ「素案」に追加財源が必要なことを書かなかったのですか。お答えください。あわせて、そうした試算結果を妥当なものと考えるか、お答えください。
民主党の輿石幹事長は、与野党協議の土俵作りのため、年金制度改革の案を早くまとめる意向を繰り返し示しています。しかし、先ほどの試算の隠蔽疑惑があるほか、最近では昨年6月の「成案」を取りまとめた民主党内閣の与謝野元大臣が民主党の年金制度改革は「嘘」であり「使いものにならない」、「成案では、一応看板だけ残しているが、あれは墓碑銘」とまで言い切っています。このように「死せる年金制度改革」疑惑まである中にあっては、今度示されるものは、抽象的な考え方ではなく、よほど具体的なものでなければ意味がありません。これを欠いては、民主党の言う年金制度改革は、幽霊のような実体のないものであって、不都合な真実を隠して、できもしないものをできると言い募る、民主党マニフェストの典型的な手法の繰り返しとなります。
増税だけ決めて、その使途たる社会保障制度の根幹について将来の姿が曖昧かついい加減では国民の理解は得られません。そこで総理には、考え方や選択肢といったものではなく、輿石幹事長の発言も踏まえ、新年金制度の所得制限の水準などの詳細設計、更にはその費用と財源についての政府・与党案を、消費税率引上げ法案を国会に提出するのであればその提出より前に明らかにしていただくことを求めます。その際には、報道された試算との関係や、我々が主張してきた更に必要となる消費税率の引上げ幅との関係、中堅所得者の給付と負担に及ぼす影響についても具体的に説明していただく必要があります。負担を先々の話として誤魔化すことは許されません。総理、このことを確約いただけますでしょうか。その期限も明確に示してください。
なお、この浮かんでは消える年金制度改革を早くから提唱してきたのが、今回入閣した岡田副総理に他なりません。かつての参議院選挙で「まっすぐにひたむきに」年金制度改革を訴えた当時の代表であった岡田副総理は、年金目的消費税3%というかつての主張と今回の一体改革の整合性を含め、国民に分かりやすく説明するべきであり、そのことこそが一体改革担当大臣としてまず果たすべき職責ではないでしょうか。マニフェスト等では消費税収は年金に充てるがその分の増税は不要とされていたものを、再び説明を変えるのであればそのけじめも必要です。総理の見解を伺うとともに、岡田副総理には、「逃げないできちっと結論を出す」という総理からの人物評価に相応しい対応を期待しますが、その決意も伺います。
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第180回通常国会における代表質問 谷垣禎一 衆議院議員 平成24年1月26日(木) 自由民主党 衆議院議員 谷垣禎一 |